2019-08-22

超重要な道だった!幕末につくられた幻の裏道「徳川道」とは?

摩耶山のカスケードバレイ(杣谷道)をはじめ、
六甲には 「徳川道」と呼ばれるハイキングルートがあります。
徳川って、あの徳川です。将軍です。葵の御紋です。
なぜ「徳川」なのかというと、徳川幕府がつくったからなのですが、
幕末に突貫でつくられたにもかかわらず、ほぼ利用されず
今なら無駄な公共事業で叩かれるであろう道なのです。

でも、深く知ると、この道が超重要だったことがわかり、
面白かったのでご紹介します!

「徳川道」 摩耶山・杣谷峠のあたり。石積みが残っている

そもそもの発端は、生麦事件

ペリー来航から間もなく徳川幕府は開国に踏み切り、
外国人が居留するようになります。
そんな中、武蔵国生麦村(横浜市鶴見区生麦)で
薩摩藩の行列にイギリス人が乱入し、藩士に殺傷される事件が起こります。
それまで外国人との衝突はあったのですが、これが大きな外交問題になります。
イギリスは幕府と薩摩藩に多額の賠償金を請求。
薩摩藩とイギリスの戦争にまで発展していきました。

この生麦事件にこりごりしたであろう幕府は、
外国人との衝突を避けるために万策を練ります。

そのひとつが「徳川道」でした。

神戸開港まで時間がない、ヤバいよ、ヤバいよ

話を神戸に移すと、神戸港の開港が決まり、
外国人を迎え入れるための準備が急ピッチで進められます。
居留地の設置やら、運上所(税関)や旅籠(ホテル)やら…
ただ、外国人を迎え入れる準備地が、大名行列も通る西国街道
(京都~下関を結ぶ旧山陽道)と近い、近すぎる…てか接していたみたいです。
これでは第二の生麦事件が起こってもおかしくない!

そこで、幕府は迂回路をつくることを決め、
西国往還付替道、つまり徳川道の造成を超特急で進めることになりました。
どれだけ特急なのかというと、年表を見ましょう。

※『大正八年陸軍特別大演習地帯案内』 安治博道, 会下山人 編 (赤西万有堂, 1919) の
「徳川道」の説明には 10月7日に工事着手とありましたが真偽はよくわかりません。
※ 『徳川道 : 西国往還付替道 』 徳川道調査委員会編 (神戸市市民局 1978)には、
入札は形だけのもので、それよりも早く工事が進められていたであろうとう説明がありました。
★年月の表記は、旧暦(西暦)です。

5月に神戸港の開港が決まり、7月に迂回路設置の命が下り、
9月に計画が進み、10月?11月?に工事スタート※。
ほんで神戸港開港の12月7日までに完成という無茶ぶり。
でも当時の人はすごいんです。やってのけるんです。
※工事請負入札は形だけのもので、それより以前に
 工事を着手していたようです。そら、そうですよね。
 入札後から工事着手だったら、さすが「無理っす」だったと思います。

年表に戻り、その後を見ましょう。
迂回路竣工の2日後、王政復古の大号令? 幕府オワッタ?
そうです。明治維新です。幕府が倒れ、
迂回路はすぐに放置プレイ状態になります。
さらに、外国人居留地を小迂回する道がつくられ、
完全にお役目御免になりました。

小迂回路のルートは、相生町~宇治川~花隈~北野 
※参考文献『神戸歴史散策』 春木一夫 著 (保育社, 1981)

「つくる必要があった」に1票を

で、気になるのが、徳川道をつくる意味があったのか論争です。

そんな論争があるのかわからないのですが、
個人的には「意味があった」に1票を投じたいです。

その理由①
幕府の力が低下し、外国人を追い払えという「攘夷」の気運が高まるなか、
外国人と揉め事を起こさないでねって言ったところで意味がありません。
そんな時は、環境を変えることが大事。
外国人と衝突しない環境をつくろうとした判断は正しかったと思います。

その理由②
生麦事件で請求された賠償金は、とんでもない額でした。
賠償金だけでなく、薩摩藩とイギリスの戦争も起こりました。
その損害は計り知れません。
それに比べて工事費用のほうは負担が少ない。
リスクヘッジ的にも妥当だったのかなと。

歴史のプロでも何でもない者の意見として軽く受けながしてください。
一番の理由は、今ハイキングを楽しめるから!

西国往還付替道は、明治後期・大正期に 「徳川道」と呼ばれるようになり、
ハイキングルートとして再発見されました。
徳川道の一部であるカスケードバレイ(杣谷道) は、
本当に気持ちいい道です。そんな道を残してくれた徳川さんに感謝して
ハイキングを楽しみたいです。

↓ カスケードバレイ(杣谷道) をハイキングしてきました!

参考文献

  • 明石市史資料. 第7集 上 (明治前期篇) (明石市教育委員会, 1987)
  • 徳川道 : 西国往還付替道 / 徳川道調査委員会編 (神戸市市民局 1978)
  • 大正八年陸軍特別大演習地帯案内 安治博道, 会下山人 編 (赤西万有堂, 1919)
  • 歴史と神戸 : 神戸を中心とした兵庫県郷土研究誌. 14(4)(72) 神戸史学会 編 (神戸史学会, 1975-07)
  • 神戸歴史散策 春木一夫 著 (保育社, 1981)
  • 神戸の歴史ノート 田辺眞人・谷口義子著(神戸新聞総合出版センター,2018)

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